チャペルはどこ?
1台のバスが、静かに止まります。タテ1列に並んだ、高校3年生の僕たちは、期待で胸が高鳴ります。
ドアが開き、パーティ・ドレスに着飾った女性たちが、次々と降りてきて、僕たちの列の先頭と手をつなぎ、その夕のカップルが誕生していく。これが、グロトン校の、年に1度の「ブラインド・デート」です。
女性たちは、ニュー・イングランドの、ある全寮制・女子高校の3年生です。
こちらグロトン校は、僕が1年間、交換留学生として学んでいる、全寮制・中高一貫の男子校です。
僕のパートナーは、たしか、髪の黒い、小柄な女性でした。これから、食堂でディナーを食べ、そのあと、ホールでダンス・パーティです。
休暇中以外には、社交のチャンスがない、「哀れな」寄宿生たちのために、学校が年に1度、デートさせてくれるのです。
ダンスのときは、先生たちが、ホールの壁際に陣取って、風紀が乱れない
よう、見ています。当時のダンス・パーティといえば、早い曲は「ジルバ」、スローな曲は「チーク」で踊りました。
ダンスが終わると、暗くなったキャンパスを散歩します。そこで僕は大失敗をします。何しろ僕は、「ハチ」という怖い風紀係の先生がいる、神奈川県立湘南高校から来ているので、デートなどしたことがありません。
僕のパートナーが歩きながら、「チャペルはどこ?」と聞くのです。彼女は、他のカップルたちが、教会の中に消えたことを知っていて、僕に聞いたのですが、僕はなんと、「教会の中はまっ暗だから、行くの止そう」と言ってしまったのです!
これは、僕が人生で犯した「3大失敗」?の1つでしょう。