maboroshispeechのブログ

スピーチ形式のエッセイ

借金王

36歳で、父親の遺した40億円の借金を引継ぎ、16年後、52歳で完済するまで、3回の地獄を味わい、それでも這い上がった男がいます。「湯澤剛」、57歳です。

 

最初の地獄は、父親の事業を引き継いだとき。大船(鎌倉市)を中心に、居酒屋チェーンの16店、他に焼き肉店、カラオケ店、サウナ店など、合計33店でした。

 

湯澤は、借金の相続を放棄することもできましたが、それでは、従業員や仕入れ先に大きな迷惑がかかることを思い、返済する決心をします。

 

借金40億円は、毎月3千万円返済しても、80年かかります。湯澤は116歳になってしまいます。

 

自社チェーンの居酒屋は、どの店も暗く、メニューも古く、客は来ませんでした。ヒマな従業員が2階でマージャンをしている始末でした。

 

そこで湯澤は、新たに25歳の店長を雇い、店をリニューアル、女性やファミリーも入店しやすいように、照明を明るくし、鎌倉野菜を使った斬新なメニューを加え、食器類も一新しました。しかし、客は増えるどころか、かえって減ってしまいました。

 

これが2度目の地獄です。

 

そこで、もとに戻り、中年の男性客に的をしぼり、定番メニューとしたところ、客足は回復、5年目の2004年には、借金は10億円減り、30億円になりました。

 

湯澤は、居酒屋16店だけを残し、他の店はすべて処分することとし、持ちビルも売りました。従業員を減らし、極限までコスト・ダウンしました。しかし、これが原因で、店で食中毒が起き、また火災を起こしました。

 

これが3度目の地獄です。

 

再起した湯澤は、事業は「人」であると気づき、従業員を増やし、働きやすい店にした結果、店は大繁盛、2015年には借金の残り30億円を完済します。

 

それから5年後の2020年、コロナのため、店の客は減り、湯澤は4度目の苦境に立たされています。湯澤がどう乗り切るか、注目です。