maboroshispeechのブログ

スピーチ形式のエッセイ

大阪

   「そんなに先のことは、お約束できません」

 

   取引先の社長秘書(男性)に、こう言われてしまいました。

 

   東京のビジネスマン、特に、役員クラスは、6ヶ月先の大阪訪問を計画し、取引先のアポイントを取ります。

 

   大阪支社にいた僕は、前述の社長秘書に、〇月〇日、東京から常務が来るので、社長のアポイントをお願いします、と頼みました。

 

   ところが、秘書さんに、「うちの社長は6ヶ月も先の約束はしない」言われました。大阪商人は、「明日」何をすれば一番儲かるか、前日に決めるので、大会社の常務であろうと、平気でアポをキャンセルする、というのです。

 

   困った僕は、さらに頼み込みます。すると秘書さんが、「大丈夫、私がうまくやります」と言ってくれたので、本社に「アポ」が取れたと連絡しました。

 

   社長のスケジュールを調整する秘書さんが言ってくれたので安心です。

 

   一方、その年は(1988年)、昭和天皇のお具合が悪く、皆が心配していました。その時、本社から大阪支社に、「歌舞音曲」(かぶおんぎょく)は慎むように、との指示がきました。要するに、天皇陛下が大変なときに、「飲みに行くな」ということです。

 

   そして、もし、ゴルフの途中で、訃報が入ったら、すぐプレーを打ち切り、

帰宅するようにとの指示がありました。

 

   運悪く、数日後に先程の大阪の社長さんが主催する、ゴルフ・コンペがあります。我が社も参加するので、先方の部長に挨拶に行き、説明しました。

 

   すると、先方の部長は機嫌を悪くし、「大阪ではそんなことはしない」と言われてしまいました。形式を重んじる東京と、実利を重視する大阪との違いが、はっきり出ました。