お金持ち
先ほどから、僕の左手あたりをしきりに見ている人がいます。正面に座っているB社長です。
Bさんは、事業に成功し、高価なものばかり身につけていますが、どうも
僕の腕時計が気になるらしいのです。
僕の腕時計は、その辺で買った5千円のものでした。ついにB社長が
「それ、ロレックスの○○?」と聞いてきました。僕は、そんなわけないでしょと思いながら、「いえ、違います。これはただの安物です。」と答えるほかあり
ませんでした。
お金は、多く持つほど、不幸になるようです。
1億円持つと、今度は10億円持っていない自分が不幸だと思います。高価なものを手に入れても、もっと高価なものを手に入れるまでは不幸です。お金を失うのではないか、いつ盗まれるのかと、心配で、不幸です。
お金のために、煩わしさが増えます。節税の方法、遺産相続の方法、株価の見通し、などを考えなければなりません。
お金を求めて、人が集まってきます。人を信用できなくなります。
分相応の生活をしていれば、気楽で、楽しいです。ラーメンの汁で服を汚しても、洗えば平気です。ゴム草履をはいたまま、美味しいものを食べにいけます。
まわりには、これは10万円した、これは100万円したと、自慢話ばかりする人はいません。
僕は、うつになったことがあります。原因不明ですが、そういえば持ち慣れない大金を持ったときでした。お金を増やそうとして、失ったときでした。
「お金」より、「人情」がいいです。