「公」か「私」か
「公」と「私」と、どちらが幸せか。
「公」に生きるのと、「私」に生きるのと、どちらが幸せか。
「公」とは、国、会社、社会、家族、などで、「私」は、自分です。
医者であれば、患者さんや病院のことが「公」で、出世して院長になる、が「私」です。
「公」に生きる医者は、患者さんが良くなると、幸せです。しかし、「私」に生きる医者は、院長になれないと不幸です。患者さんを治すのは出世のためです。
スーパー・ボランティアの尾畠春夫さんは、とても幸せそうです。
尾畠さんは、百パーセント、「公」に生きています。彼の場合、「公」とは、被災した人々を救うことです。社会の役に立つことです。
収入は、月5万5千円の国民年金だけです。生活費を切り詰め、愛用の軽自動車で、遠い被災地に出かけて、家財を整理したり、泥やがれきを片づけます。
市民税や、NHKの受診料を払う月は、食費が不足し、学校の校庭の隅に生えている雑草を食べたりするそうです。しかし、それを見た人がお弁当を差し入れてくれます。
自分で納得し、楽しく生きています。
尾畠さんは、魚屋を経営していたのですが、かねてから、65歳になったら、自分の好きなことをして暮らそう、と決めていました。
その頃、彼は四国八十八カ所のお遍路をします。途中、沿道の家々から、「お接待」を受けます。お遍路さんに、食事や宿泊を提供してくれるボランティアの人々です。
これに感動した尾畠さんは、あとの人生をボランティアで生きると決心します。
そして、魚屋をたたみ、国民年金だけでの、ボランティア生活です。
子どもたちは、独立しています。
奥さんは、家を出ましたが、尾畠さんはボランティアを続けています。