買った商品を棚に返す
買った商品を棚に返す
1973年、オーストラリアのシドニーに駐在していたときのことです。
ある金曜日の夜、僕はショッピング・モールでセーターを買い、レジに並んでいました。
レジ係の中年女性は、包装紙の裏に、鉛筆で足し算をしています。その計算が遅く、なかなか列が前に進みません。レジに計算機がないのです。
閉店時間の9時が近づいています。しかし、まだ僕の番がきません。
やがて9時になり、閉店のチャイムが鳴りました。すると、レジの女性は急に、ハンドバッグを持って、帰ってしまいました!
残された僕たちは、手に持った商品を、黙って元の棚に返しにいきます。誰も文句を言いません。
客がいても、「時間になったら帰る」、これがオーストラリア流です。こうしないと、働き方改革は進まないでしょう。
ちなみに、オーストラリアでは、法律で定められた年次有給休暇が4週間もあり、日系企業は、よく違反を見つけられ、労働監督局のようなところから注意されていました。
ビジネスの世界でも、ブラジル相手に、同様の経験をしました。
あるとき、僕はブラジルから鉄を買う交渉をしていました。あと1本の電信で商談がまとまるという、その日に、相手が長期休暇に入ってしまい、慌てたことがあります。
国際社会ではそれが普通で、日本人の方が少数派です。
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