maboroshispeechのブログ

スピーチ形式のエッセイ

友人への手紙

「シューパロ川のほとり」を読んで

 2020年の夏、僕は友人へ、次のような「読後感」を書きました。友人の奥さんが書いた本を読み終えたからです。

 

手紙の文章

 今朝、梅雨空のもと、しっとりとした高原の冷気を肌に感じながら、ベランダで本書を読み終えました。本書を送って頂き、ありがとうございました。

 普段の僕は、本を一気に読むことはなく、少し読んでは、別の本に移り、また次に少し読む、という気ままな方式なのですが、今回は、送って頂いたということと、読み進むうちに引きこまれ、この力作を一気に読みました。文章表現があまりに格調高く、感嘆しました。

 北海道といえば、廃駅や廃線のニュースばかりが目立ち、なぜこんなに寂れるのかと、無知な僕は疑問に思っていたのですが、これだけ北海道の主要な産業であった炭鉱が次々と閉山したのでは、やむを得ないと思います。

 「ふるさと大夕張」というホーム・ペイジを見ると、昭和13年に「主夕張尋常小学校」時代に赴任した先生の、「教室も先生も足りなかった」、「生徒と夕張岳に登った」という回顧や、平成11年に、50歳になった卒業生が無人の大夕張を訪れ、「鹿島小学校」の庭にテントを張り、1夜を過ごす話などが載っています。

 本書をより良く理解するために、夕張炭鉱の歴史を少し見てみました。

  1907年 (明治40)大夕張炭鉱会社設立。1911年、三菱が買収。

  1911年 (明治44)清水沢駅→二股(南大夕張駅)鉄道開通。

  1960年 (昭和35)夕張市 人口11万7千。

  1973年 (昭和48)三菱大夕張・閉山。

  1990年 (平成 2)三菱南大夕張・閉山

  2019年 (令和 1)夕張市 人口7,998人

日本のエネルギー構造の転換によるとはいえ、あっという間に炭鉱がなくなり、人がいなくなったのがわかります。加えて、ダムをつくるために、故郷が水底に沈むとは、残酷です。

本書を書くことにより、いろいろな人から便りがあり、会ったことがない人でも、著者との間に深い心の交流が始まり、またその先に新たな人間関係が生まれる、など、僕もエッセイ集を書いて、まさに今、経験しており、「書く」ことの素晴らしさがわかります。

中国人や朝鮮人のこと、差別の記述に興味をひかれました。事実がわかりました。僕の実家の近くにも、朝鮮人一家が屑屋をしていましたが、子供の頃、彼らが僕を複雑な「眼」で見ていたことは良く覚えています。

 しかし、これは、日本・日本人だけではなく、中国人社会の格差はすさまじいし、朝鮮も昔から「両班」による民衆支配は過酷なものだったようです。

 炭鉱労働者も、従軍慰安婦も、「契約」で働いた者と、奴隷のように強制された者の両者があったものと思います。

「書く」ことにより、何かが起きることがわかりましたので、僕はさらに書こうと思います。今、毎日1つのショート・エッセイを書いています。