maboroshispeechのブログ

スピーチ形式のエッセイ

お国柄

日本と外国では、仕事ぶりがすごく違います。基本的に、日本はチーム・プレイ、外国は個人プレイです。

 したがい、日本企業が海外に進出すると、いろいろ驚くことが起きます。

タイにオフィス家具の「O製作所」が進出したとき、うちの会社がお世話したのですが、そのときの話です。

 工場建設の途中で、びっくりするようなことが起きました。ある日、日本人の責任者が建設中の建物をみると、玄関ロビーに大きな丸い柱が立っていました。驚いて設計図を見ると、そんな柱はありません。

 現地人リーダーを呼び、詳しく聞いてみると、そのリーダーが、自分の判断で、美的感覚から、ロビーに丸くて太い柱を立てたというのです。すごい個人プレーです。

 ようやく新工場が完成し、製品が市場に出ました。ところが、しばらくすると、不良品が返品されてきました。見ると、明らかに、工場から出荷されてはいけない「不良品」です。

 詳しく調べてみると、原因が分かりました。製造ラインの最後に、「検査係」がいます。検査して、不良品があると、記録します。しかし、その不良品を「取り除く係」がいませんでした。だから、不良品がどんどん市場に出荷されたのです。実際に起きたことです。一般に海外の労働者は、自分に与えられた仕事以外はしません。もし、それ以上の仕事をするなら、給料の値上げを要求します。日本の常識は通用しません。

 他にもあります。日本では、自分の後継者を育てることも仕事のうちですが、外国では、自分の技術やノウハウは、絶対に他人に教えません。自分個人の財産です。ある会社で技術を習得したら、もっと高い給料で雇ってくれる会社に転職します。それが出世です。

 日本は人材を、社内でじっくり育てる「タテ方式」で、外国は他から引き抜く「ヨコ方式」、と言えます。日本の会社では、1人辞めたら、社内の誰かがあとを引き継ぎます。しかし外国の会社では、1人辞めたら、すぐ新聞で募集して、穴を埋めます。

 プロ野球に例えれば、若手の選手をじっくり育てるのが日本式、大金を払って一流の選手を集めるのが大リーグ式といえます。どちらも一長一短のようですね。