京都といえば
1959年の春休み、兄と、アメリカ人の友人ビルと、僕の3人で、京都に行きました。父が、3人分の旅費を出してくれたのです。兄が高校3年、ビルと僕が高校1年でした。
あちこち行きましたが、ハイライトは「修学院離宮」でした。離宮に入るのは大変です。何ヶ月も前に、宮内庁に申し込まないと見学できません。しかし、父のビジネス・パートナーが京都に住んでおり、その奥さんが、知り合いの尼さんに紹介状を書いてくれました。
尼寺にいくと、名刺に修学院離宮への紹介状を書いてくれました。本来は、離宮で尼さんの名刺を見せると、すぐに入ることができました。離宮の庭は、庭園というより、広大な「荘園」という感じで、往時を偲びました。
ところで、話は変わりますが、京都では訪問先で「ぶぶ漬けでもどうどす?」(ぶぶ漬け=お茶漬)と言われたら、「もう帰ってください」という意味ですから、「いやいや、もう失礼します」といって帰らなければいけません。
関東の人は知らないから、お茶漬けを用意してくれるのかと思い、待ちますが、家の主人は奥に引っ込んだきり、二度と出てきません。帰らないほうが悪いのです。これが京都の流儀です。失礼なのは、帰らない客の方です。
もう1つ、京都の人から「考えときます」と言われたら、「断られた」ことです。僕が商社マンとしてシドニーに駐在していたときのこと、駐在員の奥様の間でひと揉めしたことがあります。京都出身のHさんの奥様のことです。
奥様たちの集まりが計画され、東京出身の奥様が幹事で、H夫人に電話して誘ったそうです。H夫人は、「おおきに。考えときます〜」みたいな返事をしたのだと思います。
東京出身の幹事さんは、数日して、H夫人に再び電話し、出欠を尋ねたところ、あとで、H夫人がたいそう怒っていたというのです。「最初の電話のとき、はっきりお断りしたのに、また電話するなんて失礼な!」という訳です。
東京の奥様にすれば、「何言ってるの、『考えておきます』というから、わざわざまた電話したのに、何よ!」ということになります。
駐在員の奥様たちは、人間関係がいろいろ難しいのです。