maboroshispeechのブログ

スピーチ形式のエッセイ

タバコ

タバコが一番美味しかったのは、高校生のときです。不良ですね。

 友人が、横須賀のアメリカ海軍基地から洋モク(外国タバコ)を手に入れてくるのです。僕が好きだったのは「KENT」です。白い、硬い箱に入っていて、それはそれは上品な、良い味でした。親が寝たあと、自分の部屋で受験勉強しながら吸いました。お小遣いが「高価な煙」に変わりました。

 大学では、スキー・クラブに入り、合宿に行ったとき「いこい」が流行って、みんなで吸いました。「いこい」は安かったからです。

 父は、家では、両切りの「缶入りピース」を吸うことが多かったです。味としては、両切りの「富士」が一番美味しかったと思います。

 もっと美味しかったのは、東京オリンピックで通訳のアルバイトをしたとき、ローデシア・チームの白人役員が吸っていたタバコです。これが、生涯最高の味でした。1箱下さいとお願いしましたが、断られました。

 会社に入ると、ほとんどの男性がタバコを吸っていました。女性は、髪や衣服が臭くなるのに、よく我慢していたと思います。

 タバコで失敗もしました。新入社員のソロバン講習があり、テーブルに灰皿がおいてあったので、講師が話をしているとき、タバコを吸ったらえらく怒られました。

 紙巻きは40歳で止めましたが、パイプタバコはすごく美味しいです。これが、葉の詰め方にコツがあり、なかなかうまくいきません。上手な人が詰めると、一度火がつけば、なかなか消えず、長時間、美味しく吸うことができます。火持ちを競う世界選手権が、最近日本でありました。

 今でも、詰め方を練習しています。固すぎると、燃えないし、反対でも、消えます。僕もいつか、パイプをマスターするつもりです。依存性がないので、何年かたつと思い出して吸う、という感じです。

葉巻も吸っています。紙巻きのような依存性がないので、ときどき、好きなときに吸う、吸わなくてもかまわない、という感じです。葉巻をくゆらしながら、いろいろもの思いにふけるというのは、なかなか良いものです。