maboroshispeechのブログ

スピーチ形式のエッセイ

塞翁が馬(1)

今朝(2020年7月16日)YouTubeで、ノーベル賞科学者、山中伸弥教授の講演を聴きました。

 最近京都で、山中さんが高校生たちに、「人間万事塞翁が馬」という例えを使い、人生は、山あり谷あり、良いときも悪いときもある。悪いときは、良いことの一歩手前である、良いときは、次に落とし穴があるから、それを知っておこう、と話しました。

 僕は、この例えがなつかしく、昨日届いたばかりの電子辞書で、復習のため、「塞翁が馬」を引いてみました。「人生の幸不幸は予測しがたいことのたとえ。『語源』塞翁が飼っていた馬が胡の地に逃げたが、のちにその馬は胡の駿馬を連れて戻ってきた。その馬に乗った塞翁の子は落馬して足を折ったが、そのおかげで兵役を免れ、命拾いしたという『淮南子』(えなんじ)の故事にもとづく。」です。

 山中さんの最初の「谷」は高校生のときでした。柔道大会で、山中さんのいた高校の「一軍」は、団体戦でベスト8に入れず、敗退しました。山中さんは一軍で闘ったので、翌日は、非常な疲労から、寝ていました。ところが、その日、「二軍」が個人戦に出場していたのです。翌日、学校に行った山中さんをはじめ一軍の選手たちは、柔道部の先生に、「人間としてダメだ」と厳しく怒られました。

 次の「谷」は、医学部を卒業し、整形外科医の卵として勤務した病院で、手術が下手なため、自分は外科医には向いていない、と気づいたときです。外科医をあきらめました。しかし、これが返って幸いしました。

 山中さんは、大学院に入り直し、「研究者」への道を歩み始めます。そして、研究環境の良いアメリカに行こうと、30もの研究機関に手紙を書き、返事のあった研究所に勤めるため、奥さんと幼い娘2人を連れて渡米しました。

 そこで、良い指導者に会い、指導者の立てた仮説を検証するため、マウスで実験します。そして、新しい遺伝子を発見します。この世に存在する遺伝子は、全部で3万ほどしかなく、すでに1万5千ほどは、発見されています。残り1万5千のうちの1つを山中さんが発見し、命名しました。これは大きな「山」でした。

 しかし、3年ほどして、娘を日本の小学校に行かせることに決めた奥さんが子供たちを連れて日本に帰ります。その半年後、山中さんも事情により、帰国します。・・・(2)に続く。