maboroshispeechのブログ

スピーチ形式のエッセイ

ストレス

ストレスで体が不調になった話です。

 

もう、45年ほど前になりますが、僕が商社マンとして、オーストラリアのメルボルンに赴任していたときのことです。

 

赴任して1年ほどたったときに、会社のメルボルン支店長が交代になり、それまで副支店長だったA氏が支店長に昇格しました。

 

そうすると、僕がそのA支店長に毎朝呼ばれ、デスクの前に座らされ、1時間ほど、説教されるようになりました。東京の本社や海外から僕宛てにくる電信(テレックス)を読みながら、この商談はどうなっているのだ、これは何だ、あれはおかしい、と揚げ足取りともいえる、説教です。

 

大部屋で、他に日本人駐在員や現地社員もいて、当然聞かれています。僕も迷惑でしたが、他の人たちも、毎朝、さぞ迷惑だったろうと思います。

 

オフィスにはクルマで通勤していましたが、やがて、朝の通勤でオフィスにあと10分くらいの距離になると、「胃」が痛むようになりました。これは、あの「説教」のストレスのせいだとすぐわかりました。オフィス以外では、胃はまったく正常でしたから。

 

そうこうして、半年ほどたった頃、新たに1人の駐在員が支店に赴任してきました。そして、彼が今度は、僕に代わり、毎朝の支店長説教の「犠牲者」になりました。彼が、毎朝、A支店長のデスクの前に座らされ、1時間も説教をされるのが、当然僕の席から見えるし、声も聞こえてきます。僕のときとまったく同じでした。彼も、A支店長の「病気」の犠牲者です。いい迷惑です。

 

それにひきかえ、前任のS支店長は、素晴らしい人格者で、メルボルンから帰国後、部長、取締役、副社長とトントン拍子に出世されました。S氏は、帰国後、仕事で度々メルボルン支店に立ち寄られましたが、S氏が部屋の入り口の立たれると、社員全員、反射神経のように起立し、ご挨拶をしたものです。部屋の空気が瞬時に明るくなりました。A支店長の空気とは、天と地の差でした。