maboroshispeechのブログ

スピーチ形式のエッセイ

世界の小澤

僕たちは、鎌倉芸術館のすぐ近くのそば屋で食事をしていました。

 

そこへ入ってきたのが、誰あろう、「世界の小澤」でした。これから、芸術館に出演する人です。「一番簡単なおそばは何?」。「かけそばです」。「あ、それください」。小澤征爾さんは、注文の仕方も気さくでした。

 

僕と、「世界の小澤」との距離は、2メートル。近づいて、サインを頼める距離です。しかし、小澤さんをそっとしておいてあげたい、という気持ちが勝ちました。

 

  それ以前に1回、「ニアミス」?したのは、小田急線の中です。僕はその頃、新百合ヶ丘に住んでおり、ある日、小田急に乗ると、すぐ近くに小澤さんが立っていました。どうも、草野球の帰りらしく、数人の仲間と、野球談義をしていました。そのうち、席が空いて、彼が座りました。

 

すると、大きなバッグを開け、分厚いスコア(楽譜)を取り出し、目にもとまらぬ速さで、ペイジをめくりながら、赤鉛筆で何やら書き込んでいきます。今まで野球談義をしていた人とは別人でした。

 

小澤さんは、ボストン交響楽団の指揮者を長年つとめていました。ぼくも、ボストンに滞在していたことがあるので、すごく親近感を感じます。同じ景色を見、同じ空気を吸ったからです。

 

数ある小澤さんの演奏の中でも、ウィーン・フィルハーモニーとのニューイヤー・コンサートは格別です。2002年、「楽友協会」の四角いホールで、恒例のラデツキー行進曲やウィンナー・ワルツなど、小澤カラーの演奏は、ユーモアも交え、出色でした。CDが出ていますが、YouTubeでいつでも見られるのが嬉しいです。

 

小澤さんの最大の功績は、「サイトウ記念オーケストラ」を創ったことでしょう。松本に聴きに行きたいのですが、一度も実現していません。

 

彼の活躍に、斉藤先生も、天国で・・・やはり怖い顔をしているのかな?