maboroshispeechのブログ

スピーチ形式のエッセイ

大空の大エース

  4年間の太平洋戦争で、部下を1人も死なせなかった軍人がいただろうか。

 

  います。「零戦」という名戦闘機のエース、海軍航空隊、坂井三郎氏です。

  

  2000年10月、坂井氏の葬儀で、圧倒的な存在感を示したのが、黒い

軍服に身を包んだ、在日米海軍の軍人たちでした。

 

  坂井氏は戦争中、南方の空で、零戦を駆り、64機の敵機を撃墜しました。「5機」撃墜すれば「エース」と言われる中で、「64機」も撃墜したのです。

 

敵機を撃ち落とすのは、「走りながら針の穴に1発で糸を通す」のと同じくらい難しいそうです。これで64機も撃墜したのだから、いかに神業のパイロットだったかわかります。

 

しかも、自身が生きて帰ったばかりでなく、一緒に編隊を組んで敵機と戦った部下たちを、最後まで1人も死なせなかったことで、世界の戦闘機パイロットたちを驚愕させました。

 

  このような坂井氏は、戦後、空のヒーローとして米海軍関係者の間で尊敬を集め、招かれて30回も渡米し、「エース」たちの集うイベントに出席、あるいは講演を行いました。在日米海軍の司令官たちも、同氏との交流を求めました。

 

  同氏は太平洋戦争に対し、厳しい見方をしています。兵士は上官の命令に

従って戦い、結果、戦後の国際裁判で、多くが有罪となり、処刑されました。

 

しかし、兵士に命令した多くの上官は罪を逃れました。なんと悲しいことか、と坂井氏は嘆きます。死が美化され、司令官から「死んでこい」と言われて、パイロットたちは出撃しました。しかし同氏は自分の部下には、「絶対に死んではならん」と言い続けたそうです。

 

  坂井氏いわく「戦争は絶対にしてはならない、命がけで平和を守るべし。」

 

この稿は、「知られざる坂井三郎」(零の会編)を参考にしました。