maboroshispeechのブログ

スピーチ形式のエッセイ

時 間

あるとき、友人の奥さんの葬式に行きました。

 僕は早めに葬儀場に着きましたが、すでに10名ほどの会葬者が来ていました。たくさん並んだパイプ椅子には、まだ誰も座っていません。見ると、葬儀社の人が高齢の女性に着席を勧めていました。

                                                                                             

しかしそのおばあちゃんは、遠慮しているらしく、座ろうとしません。おばあちゃんが座らないので、ほかの若い人たちが座れません。葬儀社の人が再びおばあちゃんに席を勧めますが、まだ座りません。

 

僕は若いし、しかも男、先に座るというわけにはいきません。会場全体がそういう雰囲気で、皆、おばあちゃんを注視しています。葬儀社の人が五回くらい勧めてようやくおばあちゃんは座りました。そして、廊下に溢れていた会葬者がようやく座ることができました。

 

おばあちゃんはおそらく明治生まれで、当然のマナーを守ったのでしょうが、そのために座れなくて待っている人も大勢いました。皆が着席しなければ葬儀開始が遅れるので葬儀社の人も困ったことでしょう。

 

おばあちゃんの時代には、皆が5回ずつ遠慮しながら、ゆったりと時間が流れたのでしょうが、スピードの速い現代では、葬儀社も会葬者も、ちょっと困ったのでした。

 

そういえば、江戸時代から明治にかけて、日本人は時間に大らかで、約束の時間に現れず、困った西洋人から苦情を言われ、時間を守るようになったと、何かで読んだことがあります。

 

時間といえば、台北駐在員のとき、知人の結婚式に呼ばれ、定刻より早めに行ったのですが、会場には誰もいませんでした。1時間くらい経ってから、ボチボチ集まり始め、宴会が始まったのはさらにそれより後でした。それが台湾の習慣なのだそうです。

 

一昔まえに、「沖縄時間」というものがあり、1時間は遅れる、というものでしたが、今はどうでしょうか。名護という町で、あるお宅に食事に呼ばれ、ご主人に、帰りのバスの予約をしたいというと、30分ごとにいくらでもバスはある、といわれ、食事が終わり、バス・ターミナルに行ったら、「今日のバスは終わりました」といわれ、結局ご主人に那覇の飛行場までクルマで送ってもらいました。

 

しかし、外国に行けば、日本が世界で一番、時間を守る国であることがわかります。

 

都合により、明日2日の分まで、以下に掲載します。

 

「Ono」

ワイキキに、日系人家族がやっているハワイ料理店があります。「Ono」

(オノ)という名で、ハワイ語で「美味しい」という意味です。いつも、地元の人や観光客で混んでいました。

 

僕たちも、行くのが楽しみでした。「コンビネーション・プレート」を1人前注文し、カミサンと2人で分け、それでも余った分は持ち帰ります。

 

プレートに乗っているのは、タロイモの葉に包んだ豚肉(ラウラウ)、細く裂いた豚肉(カルア・ピッグ)、ビーフ・ジャーキー、サーモン・トマト、玉ねぎ、タロイモのペースト(ポイ)です。

 

あるとき、隣の席にいた日本人の若いカップルが、ほとんど食べ残して出ていきました。ネットか旅行誌の評判でこの店に来たのでしょうが、お口に合わなかったとみえます。

 

僕は、非常に不愉快でした。

 

これは教養の問題です。こんなに美味しいハワイ料理の味が分からないなら、店に入るな、ハワイにくるな、と言いたかったです。

 

日本を訪れる外国人でも、教養のある人ほど、日本料理を楽しみます。納豆が食べられない人を責めませんが、いつも食べている自分の国の料理と違うものを食べるのが、海外旅行の楽しみの筈です。

 

さて話をハワイ料理に戻しますが、豚肉を包んでいるタロイモの葉は、長時間かけて、クタクタに煮てあり、お箸で自由に切り取れるほど柔らかいです。タロイモのペーストはハワイ語で「ポイ」といい、タロイモをすりおろしたもので、紫色で少し酸味があります。慣れると美味しく、うちのカミサンは、毎日三食たべても飽きないと言います。

 

ところが時代の流れでしょうか、この「Ono」が、昨年(2019年)閉店しました。経営する家族が高齢になり、店は老朽化、お客さんも以前ほどは集まらなくなったのでしょう。仕方ありません、アラモアナ・センターのハワイ料理を食べます。

 

ホノルルでは、日本料理が大人気です。アラモアナ・センターに新しい2つのフード・コートがオープンしましたが、いずれも和食で、店がずらりと並んでいます。和食は、とにかく種類が多くて、美味しくて、高くなく、清潔なので、大人気です。世界的のようです。