maboroshispeechのブログ

スピーチ形式のエッセイ

「人」

3人のすごい「人」の話です。

 三菱商事に入社したとき、藤野忠次郎という人が社長でした。歴代社長の中でも、格別に偉い社長で、時代を先取りし、会社を大改革しました。入社式で遠くから見ただけでしたが、ほっそりした、静かな人で、商社マンには見えず、「学者」という感じでした。

 新入社員の僕が、伝票を書いていたとき、何か、上の方の階から、「霊気」が両肩に下りてくるように感じました。「社長に違いない」と直感しました。それほどすごい人物だったと思います。

 会社の業績は伸び、当時日本一であった三井物産に肉薄するようになりました。

 7年経ち、1974年、僕はメルボルン支店にいました。そのときのS支店長はすごい人物でした。ほっそりして、お公家さんのような瓜ざね顔、「麻呂は・・・」なんて言ったら似合いそうな方でした。ところが大違い。日本海軍、特攻人間魚雷「回天」の生き残りという、筋金入りの強者でした。

 このS支店長は、しばらくして、日本に帰られましたが、月に1回は、合弁会社の役員会に出席するため、メルボルン支店に顔を出されました。部屋に入られた瞬間、僕たち日本人駐在員だけでなく、オーストラリアの現地社員も、全員がはじかれたように立ち上がり、ご挨拶しました。こんなに慕われ、尊敬される方は、めったにいないと思います。その後、副社長にまでなられました。

 そんな「お偉方」でなくても、すごい人物がいました。あるとき、ハワイに向かう機内のことです。離陸直前で、CA(客室乗務員)たちは、忙しく動き回っていました。カミサンが、ビデオ映画を見ようとするのですが、どうしてもリモコンの使い方が分かりません。通りかかったCAに聞いても、忙しいので、怖い顔で、説明もろくにしないまま行ってしまいました。怒ったカミサンが、別のCAに声をかけて文句を言うと、若い人でしたが、素晴らしい笑顔で、まず謝り、丁寧にリモコンの操作をして見せてくれました。家内は大喜びで、気持ち良くハワイに行きました。ちなみにANAでした。息子の嫁にしたいです。

 世の中、すべて、最後は「人」だと思います。会社の社長、スーパーの店長、スポーツの監督、学校のコーラス部の先生、変わると、良くなったり、悪くなったりします。すぐ分かります。もっとも、あと何十年かたったら、「ロボット」がすべてやっているかもしれませんが。

 

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