maboroshispeechのブログ

スピーチ形式のエッセイ

孤独なリーダー

英国の首相にマーガレット・サッチャー(1925-2013)という人がいました。

 英国初の女性首相として、1979〜1990年、頑張りました。首相であると同時に保守党の党首でした。この点、日本と同じです。

 

今から40年ほど前ですが、「英国病」という言葉が流行しました。賃上げ→ストライキ→工場停止→業績悪化、を繰り返す悪循環のことを言います。これで国の経済全体がダメになりました。

 

サッチャーが首相になった1979年頃は、まさに英国病の最中でした。医師や看護師がストをするので、病院が機能せず、学校の給食係のストにより、休校となり、ゴミ運搬車の運転手のストにより、町中にゴミが溢れ、墓堀人のストにより、遺体が埋葬されず、タンクローリーの運転手のストにより、家庭に灯油がなくなりました。

 

サッチャーは、この英国病を治そうと頑張ります。「鉄の女」と呼ばれ、上流階級の出身が多い国会議員の男どもの尻をたたき、業績不振で国有化された企業を民営化に戻し、政府の財政支出を大幅に減らして、国の財政赤字を減らしました。

 

サッチャーは庶民の出身で、家は食料品店をしていました。勉強してオックスフォード大学を卒業しますが、議会は、上流階級出身の、オックスフォード大やケンブリッジ大を卒業している議員たちで多くが占められ、その中で、庶民出身でしかも女性のサッチャーが首相になったのは、異例中の異例でした。他に、強力なリーダーがいなかったということです。そして、サッチャーは「荒療治」を次々と行ったので、「孤独」でした。

 

しかし、サッチャーにより、「英国病」の「治療」が進みました。

 

一方、サッチャーが「英国魂」を発揮したのが、フォークランド紛争のときです。1982年、アルゼンチンが南大西洋にある英領フォークランド諸島を突然占領したのです。戦争を避けようとする議員の男どもを尻目に、サッチャーは、直ちに英軍に反撃を命じ、占領された島を取り返します。犠牲者を出し、新鋭の駆逐艦を失いましたが、国民の士気を大いに高めました。

 

ところが、サッチャーの強力なリーダーシップに次第に陰りが出て、1990年の党首選挙で敗北し、サッチャーは引退します。しかし、ウィンストン・チャーチルに並ぶ名宰相でした。サッチャーが出なかったら、英国は壊滅していたかもしれません。歴史は、必要なときに、必要な人材を登場させるようです。