maboroshispeechのブログ

スピーチ形式のエッセイ

してはいけないこと

 世の中には、してはいけないことがあり、仕事人生でも、同じです。

 

友人が自身の経験を、ある刊行物に書きましたので、今日は、その話をします。

 

銀行でも、会社でも、大きなところでは、ある年齢になると、出向、または、再就職といって、外に出され、子会社や取引会社へ移ります。給料の高い「管理職」クラスがたくさんいると、人件費がかさみ、会社が困るからです。

 

人を受け入れるほうも、銀行から融資を受けやすくなる、などのメリットがあるので、「1人ならお引き受けすます」となります。

 

こうして、第2の人生の会社に移った場合、何が起きるか。

 

もともとその会社に入社し、出世しよう、社長になろう、と頑張っている「生え抜き」の社員がたくさんいます。そこへ、よそ者が、自分より高い地位で入ってくれば、どういう感情をもつかは想像がつきます。

 

会社経営では、社員のやる気とチーム・ワークが大切です。よそ者が入ってきて、生え抜き社員のやる気が落ちては困るし、チーム・ワークが乱れても困ります。

 

かといって、会社は常に改革し、前進しなければ、存続できません。

 

友人のK君は、50歳近くなり、勤め先の銀行の紹介で、取引先の中小企業に再就職します。行き先での地位は、取締役です。

 

銀行を去る前に得た、先輩のアドバイスは「向こうに行ったら、2年間は、何も言わずに、向こうの会社のやり方に従うこと。」でした。

 

K君はその通りにしました。しかし、改善すべき点がたくさん目についたので、それをすべて大学ノートに書いておきました。2年たつと、大学ノートは2冊になっていたそうです。

 

3年がたったとき、オーナー社長から、社長を継ぐように言われたそうです。それで、もといた銀行の先輩から、またアドバイスを受けます。「回りに、社長になっても良さそうな人はいないか、よく見て、いたら、その人に先に社長になってもらうこと。」

 

K君はその通りにしました。そしてさらに2年がたったとき、社長から再び社長になるように言われます。今度は、K君は社長を引き受けました。

 

こうして、K君はいくつかの経済危機を乗り越えながら、会社の業績を伸ばしたのですが、それでも、社内に「あいつ、外からきたくせに」という雰囲気があることは知っていたそうです。

 

それはもう、宿命で、仕方のないことだと思いますし、外からきたものは、最大限に「生え抜き」に配慮するしかありません。一方、経営者として、やるべきことはやらなければなりません。

 

K君はよくやったと思います。今は、経営の第1線からは引いています。尊敬しています。