maboroshispeechのブログ

スピーチ形式のエッセイ

真珠の首飾り

グレン・ミラー物語」は、DVDで数えきれないほど観ました。

 ファースト・シーンは、グレンが通う質屋です。グレンは、いつものように、自分のトロンボーンを受け出しますが、ガラス・ケースの中にイミテーションの真珠のネックレスを見つけます。恋人の誕生日に贈りたいと言うと、店の主人が、分割払いで良いと言ってくれます。

 

 グレンは恋人と結婚しますが、自分のサウンドを創るという夢は遠く、場末の劇場で、しがないバンド・マンに甘んじていました。

 

奥さんは、夢をあきらめかけていた夫を励まし、作曲の勉強を再開するよう

促します。そして、自前のバンドを持てるように、内緒で貯めたお金を、夫にプレゼントします。グレンは、再び夢を追いかけます。

 

 ある日、自分のバンドの練習中に、曲をリードするトランペット奏者が、唇を怪我してしまいます。困ったグレンは、徹夜で編曲し直し、翌日、トランペットの代わりに、クラリネットがリードする、「新しいサウンド」が生まれます。

 

 その夜、ダンス・ホールに集まった客は、初めて聴く、美しいハーモニーに

聴き惚れ、踊るのを止め、割れるような拍手を惜しみませんでした。

 

 ついに、グレンはブレイクします。諦めずに、夢を追い求めてきた人だけに

贈られる、特別なプレゼントです。

 

ある夕、演奏している曲を、「真珠の首飾り」と名づけ、居合わせた奥さんの首にかけたのは、「本物の真珠の首飾り」でした。

 

第二次大戦が始まっていました。自分の夢が実現したグレンは、陸軍に志願します。そして、音楽隊を率いて、欧州戦線で闘う兵士たちを慰問する途上、飛行機事故で帰らぬ人となります。40歳でした。

 

 1944年のクリスマス・イブ、自宅のラジオの前には、パリから放送される

真珠の首飾り」に聴き入る、奥さんと幼い子供たちがいました。