ロケット・ササキ
ソニーやアップルは、革命的な起業家により成長しました。シャープもそうです。革命的な起業家とは、死んでも信念を曲げず、一歩間違えば会社が倒産するような大仕事に次々と挑戦し続ける人です。
手のひらサイズで、個人でも買える値段の、シャープ電卓を世に出したのが、佐々木正です。ロケットのように突き進むので、「ロケット・ササキ」と呼ばれました。
激烈な、電卓戦争の結果、数あるメーカーのうちで、生き残ったのは、シャープとカシオだけでした。
1957年のある日、シャープの佐々木は米国のロス・アンジェルス空港にいました。当時、電卓でカシオと一騎打ちしていた彼は、性能を上げるために、MOSという新しい半導体の供給メーカーを探していましたが、日本のみならず、米国のすべてのメーカーにも断られました。このまま帰国すれば、シャープ電卓は市場から消えます。
しかし、そこへ、一度は断られたロックウェル社から、迎えのヘリコプターが到着します。ササキの願いを受け入れ、MOSを供給するというのです。まさに奇跡がおこりました。これで、シャープ電卓は生き返りました。
シャープの電卓を世に送り出した、佐々木正氏の物語が「ロケット・ササキ」という本になっています。(大西康之著)
この本を読む気になったのは、副題「ジョブズが憧れた伝説のエンジニア」です。あのアップルの創業者スティーブ・ジョブズが、師として仰いだ佐々木正とは、一体どんな人物なのか、興味をひかれたからです。
1985年の秋、かねて佐々木を尊敬していたスティーブ・ジョブズが、ジーンズにゴム草履を履き、腰からタオルをぶらさげた格好で、シャープ本社に佐々木を訪ねました。
そして佐々木に「パソコンの次には何をしたら良いか」と尋ねたそうです。
了
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