リーダーは神戸税関
日本の税関のリーダーは、間違いなく、神戸税関です。
僕が商社マンの時代、台湾との大きな取引を担当したときに、それが
分かりました。
20万トンの鉄を、台湾から日本各地の港に持ち込み、それを日本の製鉄
メーカー6社が薄板に加工し、台湾に送り返すという、委託加工契約でした。
税関で輸入手続きをし、加工の上、輸出手続きをするのですが、税関にはこれに該当する規定がありません。
それでも、特例として認めてくれるよう、僕が出張して、全国の税関を説得
することになりました。
まず、橫浜税関。キャリア(出世コースの役人)を相手に、2時間説得しましたが、
結論は出ず。次に会った、大阪税関のキャリアも、横浜税関と同じ。
次は神戸税関。担当官が、サンダルをペタペタと鳴らしながら出て来て、
「わざわざ東京から、ご苦労さまです」と、手ずからお茶を入れてくれました。そして、僕の説明を聞くと、「わかりました。OKです」と、胸のすくような返事。あとは世間話。ノンキャリと呼ばれる、出世とは縁のなさそうな、たたき上げのプロ、という感じの人でした。複雑な契約で、ごまかして、不正な利益を上げようとすれば、できます。きっと、僕と我が社を信頼してくれたのでしょう。
そのあと寄った門司税関は、「神戸税関がOKならいいです」と簡単。
大阪税関を再訪し、それとなく、神戸税関がOKしたことを告げると、「OK」。
横浜税関も、同様でした。何か問題が起きれば、責任は神戸税関。自分の出世が妨げられる心配がなくなったので、OKしたのでしょう。
税関に詳しい人のアドバイスに従い、橫浜と大阪のキャリア組のプライドを傷つけないように、気をつけました。
神戸税関のたたき上げのベテランや、町工場の職人さんたち、本物のプロが
日本経済を支えているのは、間違いありません。
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